佐藤正栄堂 「時計/宝石物語」シリーズ Number 43
(2003年 8月掲載)


〜 危機を救った「純金の位牌」のお話 〜



今回は「金(ゴールド)」にまつわる実話をご紹介しましょう。


昭和55年1月21日・・・この日は日本で金の完全自由化後初めて起こった
大きな金ブームのさなかであった。
とある金を取り扱うお店では店内からはみ出したお客様の列が
見る見るうちに長くなり、開店の2時間後には50メートル近い行列となった。

そんな中に大関のワンカップを手に持ったジャンパー姿の70歳近い男性が
何やら落ち着かない表情で加わっていた。

そのお店の責任者はお客様の整理に当たっていた社員に
「酔っ払いがいるから注意」するように促した。

やがて、その酔っ払いの番が回ってきた。
その男は「正面の奥にある神棚を貸してくれませんか?」と言った。
店頭の係員はいやいやながらその人を神棚の前に案内した。
男は手にしていた大関のワンカップをその神棚にお供えすると、
おもむろにズボンのポケットから
しわくちゃになった500円札を取り出してそれもお供えした。

男は黙ったまま目を閉じ、手を合わせ10分近く神棚の前で拝んでいた。
不思議な気持ちでその光景を眺めているうちに、男が何となく
風格のある人物に見えてきた。

男はお祈りを終えると、丁寧に女子社員にお礼を言っていた。
それから、「金」の売却コーナーに移動し
今度はジャンパーの内ポケットから地金を取り出した。
やや離れた場所からその地金を見ていたのだが、表面は黒っぽく見えたものの
まぎれもなく金色を放っていた。
それは純金の位牌であった。

当日の金の価格は史上最高の価格で、小売価格が1グラム6,450円、
買取価格が6,000円だった。
その位牌は造幣局の保証刻印があり、純金に間違いなく、
検量の結果重量は2,000グラムであったので
買取価格は1,200万円であった。

その人はこのお金を拝むように受け取り、店を立ち去った。

よくよく見ると、酔っ払いではなかったもののどこか怪奇であった。
以下は想像にすぎないが....
その人は商売に息詰まったか、あるいは何かの借金に追われたか、
いずれにせよ「位牌」を処分しようと考えたからにはよほど
お金に困っていたことは確かであろう。

それでも、いざ処分する前に先祖にお詫びをせざるを得なかったのであり、
由緒有る家柄だからこそできたことでもあった。

金価格の史上で一番高い日に売却されたということは、偶然の一致か、
それまでも神が救ったのかは知るよしもないが、
まさに「金」の持つ威力を見せつけられたワンシーンであった。




「位牌」に限らず仏像・仏具やその他「金の工芸品」は佐藤正栄堂でも
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